準1級 · 読解 · 第38回
過去は誰のものか?
この回の内容
準1級 · 読解 · 第38回
略奪された文化財や遺物の返還をめぐる議論を扱った準1級の論説文です。所有権や歴史的正義という抽象的テーマを、英語でどう論じるかを読み解く力が養えます。
両者の論拠と、擁護の弱まり方
博物館側は universal space(人類の成果を並べて研究できる普遍的な空間)を論拠にし、返還は共有遺産を散らすと主張しました。
出所国側は looted(略奪された)ことと、object … is a fragment of identity(同一性の断片)であることを挙げ、A bronze in a glass case in Europe … is mute; returned to its homeland, it speaks.(ガラスケースの中では沈黙し、故地に戻れば語る)と対比します。
「中立ではなかった」という結論
What the debate ultimately exposes is that there was never anything neutral about the museum.(この議論が最終的に露呈させるのは、博物館が中立であったことは一度もないということだ)→ To gather the world under one roof was itself an exercise of power(世界を一つ屋根の下に集めること自体が権力の行使だった)→ an overdue reckoning(遅すぎた清算)。
最後は The question is no longer whether the past can be owned, but who gets to decide. と問いが差し替わります。
つまずきやすい所
○ その懸念は空虚に響き始めている(能力差は縮小した)
✗ 保存能力への懸念は妥当なので返還は避けるべき
increasingly rings hollow が根拠。
○ 来館者は来続け、学術も続いている
✗ 返還によって学術研究は成り立たなくなった
the sky has not fallen。
○ 中立であったことは一度もないと述べる
✗ 筆者は博物館の中立性を前提にしている
there was never anything neutral。
両者の論拠を並べ、擁護がどう弱まるかを追えば、結論の位置がぶれません。