1級 · 読解 · 第72回
両立論という賭け
この回の内容
1級 · 読解 · 第72回
「決定論の帰結 → 硬い決定論 → 両立論の再定義 → 批判(言葉の手品)→ 再反論(無原因の自己は不合理)」の運びです。
自由の定義を置き換える
両立論の核心は、自由を「因果の秩序を破る形而上学的能力」から 「強制や強迫ではなく、自分自身の欲求と理由から行為していること」 へ置き換える点です。
The relevant distinction is therefore not between the caused and the uncaused, but between the constrained and the unconstrained(争点は因果の有無ではなく、拘束されているか否か)。
確信から納税する人は自由で、銃口の下で財布を渡す人は自由でない ━ どちらも等しく原因を持つのに。
批判と再反論の応酬
批判は「自分の欲求自体が選んでいない力に植えつけられたなら、どの意味でそれは私のものか」。
両立論は The demand for an uncaused self is incoherent(無原因の自己という要求は非整合的)と応じ、Freedom worth wanting must be the freedom of an embedded agent shaped by history and circumstance(望むに値する自由とは、歴史と状況に形づくられた埋め込まれた行為者の自由)だとします。
結論は決着せず、名前の付け替えにすぎないのかが未解決の核心だと締めます。
つまずきやすい所
○ 決定論を受け入れたうえで自由を再定義する
✗ 両立論は決定論を否定する立場である
not between the caused and the uncaused。
○ 抑止としては正当化しうる(応報は否定)
✗ 硬い決定論は刑罰を全否定する
as a deterrent, never as … retribution。
○ 決着せず未解決の核心として残す
✗ 筆者は両立論が勝ったと結論する
remains the unresolved crux。
定義の置き換えとその応酬。結論が未決着である点まで含めて主旨です。